正安寺では毎年五月三日、恒規行事(ごうきぎょうじ)として「大般若祈祷法会」(だいはんにゃきとうほうえ)をお勤めしております。「大般若経」(だいはんにゃきょう)は六百巻、現代で言う六百冊分の経文で、仏教の根幹ともいえる「空」(くう)の道理について説かれたものであり、この要約されたものが一般的には「摩訶般若波羅蜜多心経」と理解されているようです。
数多くの経文(きょうもん)の中でもその内容、長さ、ともに特異なるとして古来珍重されつつも、六百巻という質量により実際に所有されている御寺院様方は僅かであるともいえます。また難解難入(なんげなんにゅう)の書としても有名であり、その解説のために「大智度論」(だいちどろん)なる論蔵経典(ろんぞうきょうてん)が著されたほどです。
所有されている御寺院様といえども、一朝一夕に全てを読破、理解にまで至るのは至難であり、古来この経文の功徳を賜らんと多く請われたことから、転読(てんどく)と呼ばれる独特の作法が生まれました。これを「転読大般若」(てんどくだいはんにゃ)といい、写真のように各巻の開閉を繰り返しながら、陀羅尼(だらに)、真言(しんごん)等を唱えることにより、六百巻読経と同様の功徳を蒙らしむると願われたのです。
いずれ、お知らせの「仏の教え」にて、「摩訶般若波羅蜜多心経」についても解説してみたいと思います。
「五月三日 大般若祈祷法会」の様子
行事