講座(4)『修証義』の教え⑮

仏の教え

【本文】
〇善悪の報(ほう)に三時(さんじ)あり、一者(ひとつには)順現報受(じゅんげんほうじゅ)、二者(ふたつには)順次生受(じゅんじしょうじゅ)、三者(みつには)順後次受(じゅんごじじゅ)、これを三時という、仏祖(ぶっそ)の道を修習(しゅじゅう)するには、其(その)最初より斯(この)三時の業報(ごっぽう)の理を効(なら)い験(あき)らむるなり、爾(しか)あらざれば多く錯(あやま)りて邪見に堕(お)つるなり、但(ただ)邪見に堕つるのみに非ず悪道に堕ちて長時(ちょうじ)の苦を受く。

【語句説明】
 業報(ごっぽう)=業(ごう)とは、命あるもの、生きとし生けるものの行い、報(ほう)とは、それら業の働きと、因果、縁の連なりによって生じ、自らが被した結果、報いのこと。業報とは、この世界における事象の根本原理とも言えましょう。
【本文解説】
 様々な原因等により様々な結果が生じるという因果の道理は、良い結果であれ悪い結果であれ、その現れ方により三つに分類することが出来ます。
 一つ目は順現報受といい、結果がすぐさま現れる現象です。二つ目は順次生受といい、暫くしてから結果が表れる現象です。そして三つ目が順後次受といって、その原因そのものが遠い昔となり、本人が思い出せないほど後、または当の本人がご逝去された後、次世代に現れるような結果のことです。
 だからこそたとえ、なかなか良い結果に恵まれないからといって、すぐにあきらめて、今まで培ってきた正しい行いを放り出してしまったり、反対にたまたましてしまった悪事の結果が現れず、露見しなかったからといって、更に悪事を重ねるような事があってはならないのです。 次回につづく
正安寺仏殿(羅漢殿)正面
仏殿内、内陣と外陣を区切る御簾。
仏殿(羅漢殿)の名称の元となった、内陣にて祀られる五百羅漢尊像は、明治期に九州より弟子多数と共に来山され、3年の月日を費やして正安寺裏山、宝寿山にて作成された陶製。作者は太閤秀吉の御用窯の一人、福本氏を祖とする当時11代目福本源七師。正安寺の後にも各地寺院を巡り、生涯3ヶ寺へ五百羅漢像を奉納されたとのこと。しかし内一ヶ寺は、関東大震災により灰燼に帰した由、陶製五百体もの羅漢尊像が現存していること自体が非常に稀であるため、各地窯元達が来訪されること尽きず。