講座(4)『修証義』の教え⑩

仏の教え

 身の回りのことを疎かにしながら、他人に良い顔をしたがり、あるいは家庭を顧みずして、趣味嗜好に没頭し、また己が居する日本国のことを考えずして、他国のことばかりを論調し、さらには地球の環境については後手を配しながら、自身の希求するところを優先している現状も、人間の思慮、行いの一部です。
 私たちは身近過ぎるがゆえに、その尊さや有難さ、不思議さを失念し、大事さえ無ければ惰性の中の生活をこそ最優先事項と捉える傾向があります。日本の国土や環境、空気や水、両親やご先祖、友人知己、そして己自身と他の命。
 「今我等宿善の云々」とは、この互いの命の尊厳を自覚することを、勧めている文言です。これほど幾重にも機縁が重なり、この命というものを、不可思議にも私たちお互いが、頂戴することが出来たことを真摯に自覚し、尊厳に対して相応の生き方を模索していくべきであると、説いているのです。
 更には、そのことに気づかせてくれる、仏の教えに出合えたことにも深慮して、粗末にすれば朝露が如くに簡単に散ってしまうであろう私たちの命と身体を、日常にただ流されることなく、自ら思慮し自負をもって、大切に有意義に生きることを勧めているのです。
 仏の教えとは、しがらみの多い我々日常の生活の中で、つい失念している本来もっと大切にすべきもの、守るべきもの、伝えるべきもの等を気づかせ、見つめ直させてくれるからこそ、価値があるのです。決して超常現象や霊的現象等、「摩訶不思議」を論じその他多くを扇動するなどは仏の教えとは程遠いことを理解しなければなりません。  つづく
 
平成25年竣工、改修工事基礎の上げ増しにより床下浸水を免れた堂宇。                
裏庭を水浸しにしていた、用水路の土砂も掻きだしました。
厨房棟玄関まわりの土砂も、業者の搬入に支障がない程度に除去いたしました。