己の主義主張のみを誇示し、他を理解しようともしない排他的な考えでは、他者との関係だけでなく、己が人生にも何時か支障をきたすように、自身の理想を追求するためとはいえ、思慮を尽くさずして、迷苦多きこの世を抜け出でて、別所に仏の世界を求めるというのでは、かえって己心の狭量なる世界に陥ってしまいます。
であるからこそ、たとえ惑迷多きこの世に在っても、私たち個々一人一人が、誤って誇張された見方、喧伝に惑わされたり、己自身を見失うことなく、人々それぞれが能力に応じて、自負を保って発揮できる世界に近づくべく、現世にこそ、仏の世界を追求していかなくてはならないのです。
このように心を引き締め、この世の中にこそ仏の世界を求め、また自らも後進の礎の一助となる心構えが出来たとき、人間界と仏の世界を区別することも無く、殊更にこの世を嫌い、無闇に仏の世界に憧れるということもなく、他人とは代わることの出来ない、限られた己だけの人生を全うすることができるのです。
講座(4)『修証義』の教え⑧
仏の教え