どれほど経済的、物質的に恵まれていたとしても、心の安らぎ、拠り所がなければ、このまま不安な心を抱えたままの一生となるであろうと思い始めた王子は、若く精悍な佇まいの修行僧に出会い感銘を受け、いよいよ出家(しゅっけ)の決意をいたします。
まず静かな山林に赴き、当時一般的でもあった、自らの肉体を酷使する苦行から修行をはじめました。王子も道を同じくする仲間と6年にも及ぶ苦行を実践されましたが、いっこうに心の不安は拭えず、その身体のみがすっかりとやせ衰え、歩くこともままならない姿となってしまいました。
このような身体を痛めつけるだけの苦行では、一時的に心の眼の向きを変えるのみにて、真の心の安定はあり得ないと、感じ始めていた王子は重い身体を揺り起こして、近く河の流れに身を浄め、様子を見かねた村人の乳粥の供養等により、徐々に体力を回復してまいりました。しかし同じく苦行をしていた修行者達は、王子が道をあきらめて堕落したと思い込みました。
王子は、そのような反感的な眼をさけて、近く小高い丘に立っていた大きな菩提樹の下で、決して身体には極端な無理をさせず、自然な状態を心がけながら坐禅(ざぜん)につとめました。
講座(1) お釈迦様と仏教 ④修行
仏の教え