講座(3)『摩訶般若波羅密多心経』の教え⑨

仏の教え

 〇以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罣礙。(得る所無きを以っての故。菩提薩埵は。般若波羅蜜多に依るが故に。心に罣礙なし。)
 【用語解説】
  菩提薩埵=菩薩=仏の教えに励み勤める人

  
 【本文解説】
 ここで本文は、前記内容を受けながら、文字や理屈のみに偏った教えに、執着することを重ねて戒めます。ここに説かれる「以無所得故」の所得とは、自らの利益を先に所得しようとして、仏の教えに執着してしまう姿勢や心構えのことを指します。
 つまり菩薩、真に仏の教えを勤め理解しようとする者は、その理論や理屈にとらわれるのではなく、あくまで六波羅蜜を含めて、教えの実践に精進するからこそ、どのような妄想や迷いであっても、自身の心まで見失うようなことはないのであると、説かれるのです。