講座(3)『摩訶般若波羅密多心経』の教え⑤

仏の教え

〇是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。(是の諸法は空相にして。生せず滅せず。垢ならず浄ならず。増さず減らざる。)

 【本文解説】
 「是諸法空相」とは、世界がこの諸々から成り立つという法則による現実世界、すなわち個として不変に存在できるような実体は本来なく、空相をその本質としていることを示し、その本質から物事を見聞するならば、我々は奇跡的な巡り合わせにて、その永い道程中の而今(にこん)に、たまたま一瞬一瞬を積み重ねているのであり、そこには個々の思慮中に模索されるような生じた滅した、汚れた綺麗だ、増えた減った等、両辺に偏った存在は一つもないと、説かれているのです。
 このように、現実社会を本質的な姿でとらえて、自身が社会に押しつぶされること無く、道理から導き出される自身のありようを探求したうえで、今の自らにかなった行いを勤めることが、仏の教えに通じる道といえましょう。