社会の中の【仏教用語】他⑥一大事(いちだいじ)

社会の中の【仏教用語】他

 現在では、放置しておけない容易ならざる事態、大変、大事(おおごと)の意味とされる【一大事】ですが、元来は仏教経典の一つ「妙法蓮華経」(みょうほうれんげきょう)二十八品(ぼん)の中、「方便品」(ほうべんぼん)に説かれる文言で、そこでは「諸仏世尊、唯一大事因縁ヲ以テノ故ニ世ニ出現シタモウ」とあり、仏が衆生済度の為に出生された因縁、そのことの大切さ、大事(だいじ)さを示した言葉であり、どちらかといえば【一大事】は「最も大切な」あるいは「一番重要な」という意味で使用された仏教用語です。
 さらに仏教を学ぶ際には、お釈迦様の出生を一大事に掛けるべきか、文字の並び通り「一大事因縁」として因縁に掛けるべきかと論ぜられることもあります。敢えて申せば広義としては、お釈迦様の誕生=「一大事因縁」、狭義として一大事=「因縁」と解釈するのが理解し易いと思われます。
 お釈迦様の誕生、即ち仏様の衆生済度に費やされた人生万般の一生涯も、諸因諸果の因果とそれらを助長し支える縁(えにし)の働き、自然の摂理から離れたものではなく、むしろその道理を理解することこそが、最も大切であると解釈することも出来ます。