社会の中の【仏教用語】他② 玄関・三学

社会の中の【仏教用語】他

 正安寺の大玄関を入ると正面に庫裡を護持される【韋駄天様】(いだてんさま)がお祀りされております。
 近代以前は物資、特に生物は足が速く調達することに苦心されたことでしょう。それ故におそらくは、調理場を兼ねた庫裡では、修行僧にわずかでも新鮮な物を提供し、食あたり等の病を避けたいとの願いからお祀りされたと思われます。
 ちなみに【玄関】(げんかん)も元来は老子の文言を元としながら、仏教に説かれる玄妙な道に入る「玄幽の関門」(げんゆうのかんもん)を語源としており、鎌倉時代に主に禅宗で用いられた言葉です。
 【韋駄尊天】様にお参りして後、左方に向かいますと18畳の表控室が3部屋並び、それぞれに【戒号】【定号】【慧号】の部屋札が掲げられております。
 仏教では古来から物事を観察理解に至らしむる場合、大きく3つに区分する場合が多く、【山門(三門)】(さんもん)・【三世】(さんぜ)・【三界】(さんがい)・【三学】(さんがく)他様々ありますが、仏教では古来「戒、定、慧の三学」(かい、じょう、えのさんがく)と言われるように、修行僧が学ぶべき内容を大凡の概要として三つに分けたものであり戒は戒律、すなわちきまりや規則事、定は禅定(ぜんじょう)、こころを定めて修行に打ち込むこと、慧は智慧、修行に打ち込みよく学んだ上で発せられる世界の見方、理解のことを示しています。
 正安寺ではたまたま表控室が三つ連なっているため、上中下や123の代わりとして仏教語の【三学】を当てて、それぞれの号室(ごうしつ)番号を法堂(はっとう)寄りから、【戒号】(かいごう)・【定号】(じょうごう)・【慧号】(えごう)と定めたものです。